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| 冬は日本酒にとって、もっとも大切な季節だ。気温の低い環境で醸造する寒造りは、上質な日本酒を生み出す。また、寒い冬は鍋や煮物などお酒にあう料理が食卓に並び、日本酒が一番美味しく飲める季節でもある。 今回は、関西では灘と並ぶ酒造地・伏見で、昔ながらの寒造りを守り続ける、こだわりの酒蔵を訪ねてみた。 |
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伏見にある藤岡酒造は平成6年当主が急死し、翌年廃業を余儀なくされたという過去を持つ小さな酒蔵。 そんな藤岡酒造が復活したのが平成14年。最盛期の酒造量の100分の1にも満たない量ながら、「蒼空(そうくう)」と名づけられた純米酒は、京阪神の日本酒を扱うバーや居酒屋、酒屋から絶大な人気を誇る。 当主と杜氏も兼ねる藤岡正章さんは、まだ37歳。杜氏としては若い部類だ。酒造りをしている蔵の様子を見学しながら酒が楽しめる「酒蔵BAR えん」も経営するなど、“上質の酒”と“新しい試み”により伏見でもっとも注目を集める作り手のひとり。そんな藤岡さんに、酒造りへの思いを聞いてみた。 「父が亡くなってから、北陸や東北、九州の酒蔵で修行を積みました。酒造りというのは、その蔵の特徴や気候、水がとても影響するもの。だから一カ所の蔵で長く修行するのではなく、酒造りの知識技術を増やすために色々な場所でいろんな経験をしました。 藤岡酒蔵の酒は、料理と一緒に味わうことを考えて造っています。どんな料理でもその味を邪魔しないよう、酒の香りは抑え気味にすることを心がけているんです。 また、日本酒は水の個性をとても反映します。藤岡酒造は伏見の酒蔵の中で地下水の一番上流に位置しているため「質」「量」ともに最高の水を使っているんです。そのため軟水である伏見の水の特徴がよく出た後口が柔らかい丸いお酒を造ることができるのです」 |
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| 取材時は12月、ほかの蔵ではもう寒造りが始まり、早いところでは新酒が出回り始めている。だが、ここ藤岡酒造では、あるこだわりから年明けから酒造りを始めるのだという。 「日本酒には蒸米を冷やす作業がありますが、機械で強制的に冷風を米に当てて冷ます方法と 昔ながらの自然放冷という方法があります。 どちらが良い悪いではなく、一長一短ありますが、ここではお米が硬く締まる自然放冷の方法をとっています。この方法で冷ますには外気温が十分に下がる12月末まで待たないといけないのです。 機械を使う方法の何倍も手間がかかりますが、蒼空の味わいを出すためには必要不可欠な行程ですね。」 また新たな取り組みとして、今まで純米酒には山田錦という米を主に使っていましたが、今年はすべて美山錦という米にに変えてみました。実は台風の影響で山田錦が不作になったため、2年前に急遽美山錦で純米酒を造ってみたところ、驚くことに自分が目指す味により近いお酒ができたんだとか。 「日本酒の造り方には正解はありません。僕はこの道五十年の杜氏の神様と呼ばれる人も知っていますが、そんな方でも毎年造り方を変えて試行錯誤している。 たぶん、僕も一生かかって色んな方法や材料を試して、理想の日本酒を追求し続けると思います」 |
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藤岡酒造には、蔵の内部が見えるバーもある。このバーには、お客さんと造り手の距離を少しでも短くすることができれば…という藤岡さんの想いがこめられている。そんな藤岡さんに、ちょっと変った日本酒のアテを聞いてみた。 「僕がよく行くバーでびっくりしたアテがあります。イスラエル人がやっている日本酒専門バーというスゴイお店なのですが、そこで出てきたのがクリームチーズをワサビ醤油につけて食べるアテ。実際食べてみたら、本当に日本酒とよく合いましたね。うちの蒼空ともよくあいますので、ぜひ試してみてください」 このほか京野菜“聖護院かぶら”を使った千枚漬けも日本酒に合う。このまま食べてもいいが、スモークサーモンや生ハムにのせ、巻いて食べれば、ほどよい塩気が日本酒をより引き立てる。また、この時期、恋しくなるのが燗酒。一般的に熟成されたタイプのものやコクのあるものなどが燗酒向きといわれている。酒を人肌程度の35度ほどに温めれば、ほろ酔いが長続きするうえ、塩辛などの"生臭さ"を抑え旨みを引き立ててくれる。 最後に、藤岡さんが目指す酒造りを聞いてみた。それは平成7年、再建前の最後に造った酒だ。それまで福井の杜氏さんに任せていた造りを、この年だけ但馬の杜氏さんにお願いしたところ、それまでの日本酒に劇的な変化が現れたのだという。 「今までと同じ水と米を使っているのに、全く違うお酒ができたのです。杜氏さんのやり方ひとつで、こんなにも素晴らしいお酒になるなんて!とすごく感動しました。あのときのお酒を超える日本酒を造るのが僕の目標です。それから、人は青空を見上げるとホッとするように、飲んだ人がホッとできるお酒に「蒼空」がなれればいいなと思いますね」 |
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| 同じ材料、水、空気でも、杜氏の造り方ひとつで、驚くほど表情を変える日本酒。 この冬はじっくりと時間をかけて伏見の酒蔵を巡って、自分のお気に入りの一本を探してみるのもいいかもしれない。 |
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